【書評】臆病者のための株入門
臆病者のための株入門
文春新書 2006/4/20出版 橘 玲(著)
株式投資を始める友達におすすめするために読み直した本です。
10年以上前に初めてこの本を読んだときは、こんな面白い株式投資の本があるんだと衝撃を受けた覚えがあります。
どんな本か
株式投資や経済学の基本について理論的な部分を正確かつ面白く解説している本です。
「株式投資はギャンブル」、「おいしい話はあなたのところまで回ってこない」などと言い切る橘節が炸裂しています。
読み終わったら、「あやしい詐欺話」や「楽して儲かる株」などといった話にはだまされなくなるはずです。
2006年の本と少し古めですが、株式投資をはじめる人に紹介したい本です。筆者は、時代が変わっても株式投資の基本は変わらないと述べていますが、僕もその通りだと思います。
第1章から第3章
株式投資ってこんな世界なんだよという解説です。
複利とレバレッジについての解説や株を高値で売り抜けるのは難しいという話、儲かる株は株式投資において自分がどう思っているかは関係ないという話まで、株式投資のエッセンスや醍醐味についてまとめられています。
デイトレードをしながら世界を旅する若者の話や宝くじを買う人は一生損したまま終わるという話、法律や政策などの制度上のゆがみから儲かることもあるという話など、興味深い話も紹介されています。
中でも、株式投資はギャンブルだと言い切っている部分が最高です。
多くの人がギャンブルと聞くとあやしいものだと思うかもしれません。しかし、不確実な世界で生きている自分たちの人生も偶然の積み重ねで結果が変わっていきます。僕自身も、自然界に存在するものはある程度ギャンブル的というか確率論的に結果が変わっていく部分もあると感じるので、この考え方に共感します。
第4章
そもそも株とはなにか、株式投資が始まった大航海時代のオランダの話を出して、かみ砕いて説明してくれます。株価がどうやって決まるのかという説明も単純明快に説明してくれます。
投資をはじめてそこそこの年数がたちますが、そもそも株ってなんだったっけ?という基本を再度確認できました。
第5章
ウォーレン・バフェットや日本の投資家・竹田和平の投資術を例に出してファンダメンタルズ投資について説明しています。さらには、ファンダメンタルズ投資と対局にある、チャートなどから株価を予想するテクニカル分析投資についても説明しています。最終的には、両者の共通点まで説明しています。
金融のプロであるアナリストたちでも必ずしも予想を当てたり、儲けられるわけではないという話も紹介しています。
第6章
経済学的にもっとも正しい投資法について解説しています。ノーベル経済学賞の理論を使って、誰でも理解できるように簡単に説明しています。
株式指標に連動するインデックスファンドを買うのがもっとも正しい投資法だと説いています。その上で、仮にアクティブファンドなどの投資のプロが運用するファンドを買っても、理論上、インデックスファンド(平均)を超えるような利益を上げることはできないということも解説しています。
第7章
金融リテラシーについて解説していて、確実に儲かる話などないということを説いています。
この章を読めば、「毎年10%の配当金が出る投資」といった詐欺まがいの話にだまされたり、コストや期待値を考えないで投資や賭けをすることはなくなると思います。さらに、銀行などが売っているぼったくり商品も見抜けるようになるかもしれません。
少し話は変わりますが、よくニュースになるような詐欺まがいの話に引っかかる人はいくらでもいるし、「副作用のない薬はないの?」と聞くようなメリットとデメリットのトレードオフの関係を理解できない人もいます。金融理論を少しでも勉強すれば、考え方を生活に応用でき、さまざまな情報を鵜呑みにするのではなく、検証しながら考えることができるようになるのになと思います。
第8章
ど素人のための投資法について説明されています。
人的資本(働くという価値)も含めた資産分配法についての提案が面白いと思います。たとえば、100万円レベルのしょぼい金融資産しかもっていないのに、それを株に投資するか、国債に投資するかといった資産配分をずっと気にしているよりは、人的資産をちゃんと考えて働いた方がいいという身も蓋もない話なんかも書いてあります。
金融資産の85%を日本円ではなく、外貨で運用するという度肝を抜くような投資理論について紹介し、その理由も解説しています。
普通の人がもっとも簡単に効率的に投資できる方法が世界市場ポートフォリオのインデックスファンドを買うことだということが説明されていて、章の最後にはパフォーマンスとリスクについても解説されています。
参考文献も載っているので、金融に興味を持った人は読んでみるのも面白いと思います。